Overview
ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で開催された企画展「TIME SPACE EXISTENCE」にて、藤貴彰、稲毛洋也、De Yuan Kangらによるコンテンポラリー茶室「ヴェネチ庵」での茶会プロデュースを担当。展示主催者、メディア関係者、ヴェネチア市民など2日間で100名を超えるお客さまを古今のしつらえでおもてなし。人と人、人と自然のつながりを感じていただくと同時に、ヴェネチ庵が持つ建築としての可能性を茶会を通じて体感いただく場を創出しました。
【「ヴェネチ庵」紹介(文=藤貴彰、稲毛洋也、De Yuan Kang)】
1. 「人と人とのつながり」
Covidや戦争の影響で分断に満ちた世界の中で、異なる文化を持ちつつも人と人とを繋ぐコミュニケーションのきっかけである「お茶」に注目。建築を通じて人と人をつなぐ場を作りたいと考えた。
2.「普遍性と固有性」
本プロジェクトではコミュニケーションスペースとしての茶室を世界各地で展開可能な普遍性を持ち合わせていながら、かつ固有性を体現するものとして考えた。そこで着目したのは、「地球の緯度」と「廃棄物」。ベネチアの緯度が約45度であることと、廃棄物にも地域性があることに着目し、イタリアの廃棄物(パスタ、コーヒー、コルク、紙)を建築材料として、茶室を構成。地域が変われば緯度・廃棄物が変わるため、ルールは共通しながらも、全く別の茶室が生まれ、緯度に合わせて透過度を操作することによって、光や風の制御も地域に合わせて適切に行うことが可能に。
3.「水」
世界中で水不足が叫ばれる中、展示会場であるヴェネチアでも運河が干上がっていたり、一方でアクア・アルタによる浸水が度々起こっているというニュースも耳にする。歴史を紐解くと、人類が住居を作るようになってからの建築史は、水をコントロールする歴史でもある。木・金属・ガラス・石・タイルといった水に耐えられる材料が使われるようになり、世界中ほぼ同じ材料で建築物は作られている。時には水を欲し、時には抗ってきたのが人類。ヴェネチ庵の上部構造はパスタや紙といった水に極めて弱い素材。これらの材料に新技術を用いて耐水性を付与。この技術は、どんな有機物にも化学変化によって耐水性を与えることができ、その上やがては土に還る素材特性を持っている。これにより、屋外に利用できる素材の可能性が大きく広がる。もちろん、お茶も水がなくては始まらないし、ヴェネチ庵はラグーンを臨む公園にある。水からできたお茶を味わい、水を見、水に抗う新素材の茶室に包まれる。ビエンナーレのテーマである「Laboratories of the Future」そのものを味わう展示を目指した。
4.「持続性」
展示期間終了後は、廃棄物でできた茶室を分解し、家具として再構成が可能。家具にする前提で部材寸法を決めたので、“家具だったものが展示期間中のみ茶室になっていた”とも言える。会期終了後は、購入希望者の望む造形に組み替えて、棚やテーブルに生まれ変わる。ブロックチェーン技術を用いて、展示終了後にどこの誰にいくつの部材が渡ったかをトレースできるように仕組みを構築中。また、同時に3Dデータも提供し、部材が足りなければ自分たちで3Dプリントなどで出力も可能にする。100%プロダクトでもなく、100%セルフビルドでもない、所有者が容易に手を加えられる愛着を生む家具がここに誕生する。
Credit
【設計・施工】
藤貴彰(三菱地所設計・tyfa/TakaakiFuji + Yuko Fuji Architecture)
稲毛洋也(三菱地所設計)
De Yuan Kang/カンデユェン(三菱地所設計アジア)
【制作協力】
町田紘太(fabula)/食品廃棄物部材製造
室島満(室島精工)/食品廃棄物部材用金型制作
日本化工機材/紙廃棄物紙管製造
大出治(シリカジェン)/超越液防水調合
中野秀治(IWS)/コルク床材製造
【茶会】
松村宗亮(無茶苦茶)/茶人
宇野景太(無茶苦茶)/プロデュース
【撮影】
Shohei Yokoyama/@日本
Yuta Sawamura/@ベネチア
【Special Thanks】
YAU ・有楽町アートアーバニズム
Joseph Canouil/ジョセフキャヌイ(三菱地所設計)
三菱地所設計模型室
新東通信サーキュラーデザインスタジオ
PO LLC
【助成】
公益財団法人吉野石膏美術振興財団
【主催】
European Cultural CenterVenice Biennial”TIME SPACE EXISTENCE” 2023
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Artist
茶人松村 宗亮
The TEA-ROOMメンバー
裏千家茶道准教授
茶道教室SHUHALLY代表
へうげもの筆頭茶頭
学生時代のヨーロッパ放浪中に日本人でありながら日本文化を知らないことに気づき、帰国後に茶道を開始。
「SHUHALLYプロジェクト」として “茶の湯をもっと自由に、もっと楽しく” をモットーに茶道教室やお茶会を主宰。